北総線のお得な切符|北総線1日乗車券とは
年に4回、春夏秋冬の長期休みに合わせて販売されている、土日祝日限定で北総線が1日乗降り自由になる切符です。
北総線と言えば、一時期「日本一高い」と言われていたこともありますが、この「北総線1日乗車券」は大人1,000円/子供500円とかなり良心的。
北総線の端(京成高砂)から端(印旛日本医大)までをまともに利用すると、片道860円かかることを踏まえると、往復するだけでもお得です。

今回はそんな北総線1日乗車券を使って、北総線のユニークな駅舎をめぐります。
13:28|京成線高砂駅
13:28、京成線高砂駅より出発。
最初の目的地は「白井」。そこまで約20分かかるので、道中はのんびり読書をするし、リュックから向田邦子さんの「思い出トランプ」を取り出す。
電車が出発すると、目のまえに座っていた黒いワンピースのギャルが突然手を振りだして驚いたが、どうやら電車の中で友人と待ち合わせをしていたらしい。
「後ろのほうってどこだろうって思った~!」
「ごめんね、会えてよかった~!」
と両手を合わせて喜ぶ彼女らは、下車するまでずぅっと楽し気に話していた。
ちなみに京成線高砂駅の周辺は、レトロな喫茶店や哀愁漂う立ち飲み屋などもちらほらある。スカイツリーや浅草寺などへのアクセスも良好なので、気になる方は良かったら立ち寄ってみてください:)
13:50|白井駅

13:50過ぎ、最初の目的地である「白井駅」に到着。駅名の下にも書いてあるように、白井市は梨の栽培が盛ん。
改札を抜けた先、白井駅のロータリーには梨を象った時計もありました。梨が顔の周りを手で支えて、「私、かわいいでしょ」とぶりっこしているようで、何だかクスッとした。

その歴史は明治38年にさかのぼるそう。その理由は、白井市の土壌が「関東ローム層」という果樹栽培に適した土壌であったことや、温暖な気候が関係しているそうです(参考:「千葉県白井市|よくある質問|しろいのなし)
さて、白井駅へ来た目的は改札を抜けた先の廊下を覆うこの屋根。

湾曲した屋根をY字の柱が左右で支えているデザイン。屋根のところどころからは、まるで雨漏りの途中で時を止めたかのようなデザインの照明が垂れている。

以前、車でドッグランに行った帰りに白井駅のこの屋根を見て、「今度絶対に写真を撮りにこよう」と思ったのだが、いざ近くで見てみると、自分の直感をほめざるを得ない。
骨組み自体はシンプルに見えるのに、その本数の多いこと。柱と柱の間隔が狭いため、遠くの柱が集中線に見えて、ドラえもんのガリバートンネルの中にいるかのような気持ちになった。通路の長さはおよそ__mほどなのに、反対側から道路へ出ていく人たちは必要以上に小さく感じられた。

大きなアコーディオンがブリッジをしているようにも見えますね。
白井駅の休憩室

時は少し遡り、13:53。駅についてすぐのこと。改札に上がるためホームを歩いているときに見つけた休憩室。

中に入ってみると、寄木のベンチが並び、とても風情がある。
帰ってから調べてみたところ、ここに使われている木材は「台風が来て倒木した際に、北総線の運行に支障をきたす可能性があるもの」だそうで、事前に沿線地権者の方のご協力のもと伐採したものを使っているのだそう。
何よりきちんと涼しい。この猛暑の中、あの涼しさは救いである。
14:05|歩いて小室へ

さて、ここから私は歩くことにした。ネットのマップで調べたところ徒歩28分で隣の「小室駅」に着くと書いてあったので、ダイエットのためにも歩こうと思ったのだ。
しかし、先に言っておくが、この炎天下の中で30分など歩くもんじゃない。しかも見知った町ならともかく、見知らぬ(特に人気も日陰もない町)では歩こうなどと思うもんじゃない。楽をしよう。
なぜ私がここまで言うかと言うと、この後私は迷子になるからだ。
30分で到着するはずが、結局50分歩くことになり、小室駅に着くころには息は上がり顔は真っ赤、かかとに豆、体中の汗腺から汗を垂れ流し腕はてっかてっかになっていた。
それでも道中の様子を見てくださる方は、次の小見出しに道中の様子を写真付きで載せる。
歩く、歩くな、何のための北総線1日乗車券だ

白井駅から国道464沿いにまっすぐ歩くと10分程度で橋に着く。

名はほうめきたおおはし。漢字ではこう書く。

この日私は日傘をさしていたが、最高気温は34度。おまけに湿度もかなり高く、今にも体中が溶けだしそうであった。
だが、橋の上からふっと左へ目をやると、一面みどり。その豊かなこと。

写真(私がiPhoneで撮影したへったくそな写真)ではわかりにくいが、小川も流れていた。その小川は底が見えるほど澄んでおり、都内からたった20分程度の場所なのに、とても清らかな気持ちになった。
また右側には国道が続いており、勢いよく走る車の風がぶぉっぶぉっと体中の汗をさらっていく。左右にさえぎるものがないからだろう。車をまるで団扇のように感じる日が来ようとは思わなんだ。
しかしそれも橋を渡りきるまで。橋を渡り終えると、左右を森林が覆い、まったく風が通らなくなった。そのうえ、ジジジジジとせわしなく虫たちが鳴いており、私まで思いがけず「ジジジジジ」と言ってしまいそうなほど、頭の中まで響く。
道端から突然にビビッと電流が爆ぜたときのような音がしたかと思いきや、私の片手ほどもあろうか、大きなバッタが目の前を飛び去り、ひとりで「ひぃっ」と悲鳴をあげる始末。情けないったらありゃしない。

しばらく進むと、三叉路に突き当たる。歩道は道なりにカーブするほかないので、素直に進むのだが、後々調べるとここで私は道を誤っていたようである。
(どうもこの三叉路の手前で左折すると、この後で現れる道路の下をくぐる地下道へ進めたようなのだ。その地下道を使えば、白井駅から徒歩30分程度で小室駅に到着するとのこと)
まだそんなこと、知る由もない私は、のんきに「よし、もうすぐだ」と自分を励ましていた。
カーブした道を進むと、錆びついた歩道橋に出る。なんとなく感覚で頭に入っている小室駅の方角を頼りに、この歩道橋を渡る。

背の高いフェンスにツタが絡まっており、幼いころ「探検だ」と虫取りアミと虫かごを持って雑木林を歩きまわっていたことを思い出した。

深い緑を目にすると、まだ自分を着飾ることなど頭にもなかったころの柔らかい気持ちが一時的にふわっと蘇る。
歩道橋を渡り終えると、新たな道路に出くわした。歩道橋を背に、目のまえは道路。歩道は右へのみ伸びていたので、右へ曲がって進む。すると、ドドッドドーと低い列車の走行音が聞こえた。
感覚頼りで歩いてきた私は、真下を走る北総線を見て、「あぁよかった。道は間違っていなかった」と安堵した。

しかし次の瞬間。
道路を挟んだ向かい、左側へ首をひねって口をあんぐりと開けた。道路を挟んだ先、小室駅はまだまだ遠くにあった。
時計を見ると、白井駅を出てからもう25分程度経っている。到着していてもよいはずだ。
ここでようやく、自分が道を誤っていることに気が付いた。とはいえ、北総線の線路も発見したし、駅の位置も再確認した。「大丈夫、道は続いている」と、まるで少年漫画誌の主人公気どりで歩き出した。
ちなみに、なぜ地図を見ないのか、と疑問の声があがりそうなので弁明すると、私は地図を見るのが苦手である。一応Google Mapを開きはしたのだが、何が何でどうなっているのか、ちっともわからなかった。弁明になっていないかもしれないが、私が地図をみない理由は、そういうわけだ。
こうして再度歩き出すと、少しして大きな十字路にぶち当たり、歩行者用の信号が現れた。ここで小室駅の方角に向かって、横断歩道を渡り、さらに狭まった歩道をぐんぐん進む。
ひたすら道なり。先ほど直に確認した小室駅の方角を信じ、自分を正確な羅針盤と思い込んで、ぐんぐん。ぐんぐん。
すると、ようやくまた歩行者用の信号機が現れた。ここを渡る。

橋の名前は「小室こ線橋」と言うらしい。

そしてこの橋を渡っている途中(だったかな)、ようやく、本当にようやっと小室駅が近くに見えた。

正直、小室駅への入り口がきちんと目視できなかったので、この時もまだ到着できるのか不安であったが、この橋を渡り切ったあと、もうひとつ信号を渡り、左へ曲がりまっすぐに進んだらきちんと小室駅に着くことができた。

無事に着けて本当によかった。
印西牧の原駅

くったくたで汗だくになった小室駅から続いてやってきたのは、「印西牧の原駅」。横にうっすらと斜線の入った緑色の屋根はまるで竹のよう。

印西牧の原駅をぐるりと一周すると、四方向すべてから、半円の窓が見える。

半円の窓を内側から見ると、こんな感じ。うっすらと色がついており、まるでステンドグラス。
窓ガラスを囲う白い淵には凹凸がついており、窓ガラスに入った直線と合わせると、ネジのように見える。
印旛日本医大駅

北総線のユニークな駅巡りで最後に撮影するのは「印旛日本医大駅」。ここは、北総線の終着駅でもあり、私の一番撮影したかった駅でもある。

凸レンズのようにぐんと突出した屋根と、すっと青天を指す時計塔、その手前にちょこんとたたずむ梵鐘の頭のような部分。

時計台の真横からなだらかにホームへ延びる屋根。ひいて見ると、まるで古の海底探索をする船のよう。凸レンズのような屋根を先頭に、いまにも駅自体が動き出しそうである。

反対側(改札を出て右側)へ回ってみると、より駅舎を近く感じる。ちなみに、先ほど凸レンズのようと表現した、現在は写真右側に映っている屋根は、下から見ると下記の写真のようになっている。

ドリームキャッチャーのように交錯した天井は、思わず手を合わせてしまいたくなる。べた塗された純白な色合いも相まって、どこか神聖さを感じた。
印旛日本医大駅の待合室

駅舎の写真撮影に満足して、ホームへ降りる。待合室に入るのは、最初に撮影した白井駅以来。白井駅が中々涼しかったので、期待を胸に中へ入る。

涼しい…。
帰りの電車が来るまで、15分程度あったのだが、もう10分だって待っていられる。一日(いや、主に白井→小室間)よく歩き、体中の汗を流したあとの私にとって、冷房の効いた待合室は温泉に入った後の洗い立ての布団くらい心地よかった。
16:34|矢切駅にて温泉に浸かって

旅の目的であった「ユニークな駅舎の撮影」を終え、これでもかと汗をかいてしなびた身体で向かったのは、矢切駅。
この駅も、入り口から見える窓がステンドグラス風になっていて素敵です。

ここに来た目的は、ただひとつ。温泉で汗を流し、湯舟に浸かってカッチカチにこわばった筋肉をほぐすこと。

矢切駅の改札を抜け、右手側にあるエスカレーターを上がりきると、日帰り温泉「笑がおの湯」は目の前です。
温泉施設内は当然写真撮影が禁止なので、ここから先の写真はないのだが、湯舟が内湯4つ(+水風呂1つ)、露天4つにサウナもついており、広さはそこまでないのだが、満足度はなかなか高い。
ただそこまで広いわけではないので、私が訪れた夕方頃はそこそこ混み合っていた。
シャワーで汗を流し、湯舟に浸かると、しみじみと一日を振り返った。
日帰り温泉 笑がおの湯では北総線1日乗車券の特典をもらえる
日帰り温泉 笑がおの湯の受付で、北総線1日乗車券の特典画面を表示させると、フェイスタオルをもらうことができる(2025/7/27時点)。
退館時にそのことを思い出して受付のお姉さんに、画面を見せると、
「えっと、これは…」
と戸惑った様子。
「かくかくしかじか北総線の1日乗車券を提示するとフェイスタオルがいただけると伺ったんですが・・・」
もしや特典一覧に記載こそあるが今はやっていないのか?と不安になっていると、隣からベテランらしき女性が顔を出し
「あぁ北総線の切符ですね」
と言い、フェイスタオルを手渡してくれた。その際、私の表示した画面をのぞき込み
「おぉこうなっているんだ」
とつぶやいていたところから察するに、わざわざフェイスタオルを貰うために、チケットを表示する 吝嗇家は中々いないようである。
受け取ったタオルは、白地のフェイスタオルに「笑がおの湯」とプリントされただけのシンプルなもの。
タオルとフェイスタオルは入館料に含まれているとなぜだか勝手に思い込んでいたために、それらをレンタルした私は、入館時に受け取っていれば、フェイスタオルをレンタルしなくて済んだのになぁと少し悔やみつつ、きちんと特典を受け取れたことにすっかり満足し、満面の笑みで温泉を後にした。
最後に|北総線1日乗車券を感じたこと
こんなにも長い、気ままな文章を最後まで読んでくださった方がもしいれば、心からありがとうございます。面白いか、タメになるかといったことはさておき、読んでいただけたなら、その事実がとても嬉しいです。
最後に、北総線1日乗車券を利用して感じたことを少し述べて終えます。
これまでJRや京成線や都内の私鉄など日常生活の中で様々な路線を利用してきたのだが、北総線はそのどの路線とも全く異なる雰囲気があった。
何より印象に残ったのは、駅員さんの親しみやすさだ。
初めて使う1日乗車券に、少しドキドキしながら有人窓口へ行くと、ひょこっとこちらのスマホに表示されるチケットを確認し
「あぁはい、どうぞぉ」
とゆったりとおおらかな声で応じてくださった。その柔らかい声の安心感たるや。
ひと駅、ふた駅の駅員さんが感じよいだけなら(いやそれでも嬉しいが)、ラッキー、で済むのだが、今回利用したどの駅でも駅員さんの感じがとても良かった。
北総線日帰り旅から戻り、母にそのことを伝えると、
「そう!北総線の駅員さんってなんだかとてもいいのよ」
と共感してくれた。母によると、以前、電車の中で傘を置き忘れたらしいのだが、その時の対応が良かったのだそう。ほかの路線で傘をなくすと、見つかった駅まで取りに行かなくてはいけないが、北総線で傘をなくした時には、母からして最寄りの駅(北総線の中では)まで駅員さんが届けてくださったのだそうだ。
それはその時のラッキーなのかもしれないし、今は規則が変わったりしてそうはならないかもしれないけれど、その出来事で母はすっかり北総線に対して信頼を抱くようになったそうな。
忘れものが手元に戻ってきたり、特別粋な計らいを受けたりしたわけではないけれど、穏やかな表情で対応していただけた、という事実が何よりも私のなかでは印象に残ったのでありました。
だらだらと書きましたが、とっても楽しかったなぁ。この夜がよく寝つけたことも最後に付け足して、今日はここまで。
最後まで読んでくださり、誠にありがとうございました!
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